野生セオリー。
それはアザラシーズアオ母により提唱された野生を生き抜く為の掟である。
なんとかかんとか新しい生活にも慣れ、病院にも無事連れていくことができ、ほっと一息ついていたアザラシーズとオコサマ達。
お互いの存在に慣れれば慣れるほど本性とは出やすくなるものらしく…。
本領発揮とばかりにいたずら盛りのオコサマ達です。
いたずらについてはすでに骨抜き状態のアザラシーズ。
なにをされてもかわいくてしかたがありません。
ところがたいがいは目尻を下げて見守っているのですが、時々そんなアザラシーズも首を傾げるような奇行に走る兄弟。
なんか意味があるのかねぇ、と思っていた矢先、アオ母からの一本の電話です。
なんとはなしに犬猫歴の長い母に話してみたのですが…。
「ちょっと変わってるんだと思うんだよねー。
うちのオコサマ達。
こないだもさ……(以下続く)……」
「……あー、そりゃあ、あんた。 野生だからよ。」
「そうかな? そういえばこんな事もするんだけど?」
「それも 野生だからよ。」
「ふ、ふーん。 じゃあ、これは?」
「野生だからね。(きっぱり)」
……というわけで、アオ母による野生セオリー講座をお届けします。
その一 どんなときも正体を悟られるべからず。
大自然は弱肉強食の世界です。
ですから時には猫だということが他の動物に知られては命取りになってしまうこともあります。
つまり猫特有のニャーとかミャーという鳴き声は、捕食者の的にされやすかったり、また獲物であれば正体がばれて逃げられてしまうのです。
そんな厳しい世界に住む特上兄弟はもちろん「ニャー」とも「ミャー」とも「ミュー」とも「ミー」とも、つまりあらゆる猫が鳴くときに現される擬音では鳴きません。
ではなんと鳴くのか。
それは「クルッ」と「グ」です。 とても短く鳴きます。
ハヤテさんはよく「クルッ、クルッ、クルッ」と鳴いています。
鳩のようです。 時々スタッカートを効かせて「ア、ア、ア、ア、ア」と超高音で何かを訴えます。
ちなみにこの声でなくとアカはメロメロになってつい何でもいうことを聞いてしまうようです。
が大抵はクルクルクルクルいっています。
ゲンマさんはもう少し表現力があり、「グゥ、グググ、グゥー、グァ、グゥ」とぼやきます。
ゲンマさんとはこんな感じで会話もできます。
「ゲンマ、夕飯何食べたい?」 「グァ」 「昨日と同じでいい?」 「グゥグ」 「おやつつけるからこれで我慢しといてよ」 「グー」 「それにしても雨やまないねぇ」 「グググ、グァ」。
なかなかの表現力です。
もしかしたらアザラシーズのマネをしているつもりなのかもしれません。
ゲンマさんはよくぼやきながら家の中をうろうろ歩き回ります。
なんだかその様子はボ○老人のようですが、本人は真剣なようなのでとりあえず、温かい目で見守っています。
その二 何者にも姿を見せるべからず。

どのくらい上手くその姿を隠すことができるかによって野生動物はその生死を左右されることがままあります。 できるだけその姿を見せず、時には茂みの中に、時には穴蔵の中にひそみ、必要なときだけ最小限にその姿を現す、とくに猫のような小動物には必須の能力です。
うちのオコサマ達も例外ではありません。 とくに野生の強いはハヤテさんは、可能な限りその姿を隠そうとします。 それも分かりにくい場所に。 例えばブランケットの下に。 例えば枕の下に。 例えばソファカバーの間に。 さりげな〜く忍びます。
とくにお気に入りは、床に落ちているトレーナーなどの衣類の中です。 片づけようと持ち上げて、中からハヤテさんが飛び出してくることは我が家では日常茶飯事です。 時には服の中に入ったまま走り回ります。 端から見ていると服が勝手に動いているようで、正直言って怖いですが、野生セオリーを実践しているのかと思えば諦めるしかありません。 ……服の中に入ったままの方が目立つような気もするのですが。
その三 痕跡はどのような手を使っても残すべからず。
自分の痕跡を残すことは自然界では御法度です。 とくに食べ残しなどはきちんと始末しませんと敵にその場所を知られてしまいます。 どんな手を使っても隠すことは生き残る上で当たり前のことなのです。
兄弟のうち、とくにゲンマさんはこのことについてはエキスパートです。
まずゲンマさんは食べ残しを確認します。 この場合食べ残しは自分のばかりでなく、兄の分や、時にはリビングのテーブルの上にのっているアザラシーズのものも含まれます。 とにかく食べ残しはなんでもいけません。 確認がすんだら、砂をかけようとします。 しかしもちろん砂などありませんから、いくらかけても食べ残しは隠れることはありません。 確認しては砂をかける、を繰り返すゲンマさんですが、何度やっても隠れないことに気付くととうとう最終手段に出ます。 つまり食べ「残し」だからいけないのです。 残らないように食べてしまえば、隠す必要もなくなります。
そんな使命感あふれるゲンマさんは、例えお腹いっぱいではくことになっても、食べ過ぎでちょっと「小太り系」になっても私たちを危険にさらさないため日々奮闘しているのです。
その四 手に入れた獲物は完璧に陰徳すべし。
自分の獲物を横取りされないように上手に隠すことはとても大切のことです。 リスのように木の実をあちこちに隠して忘れてしまい、そのうち芽吹くようではいけません。 何カ所かにわけつつもこまめに確認をし、獲物を見つければ速やかにその場所のどれかに隠すことは、生き残る上で必要なテクニックのひとつです。
もちらん、特上兄弟もそんな場所をいくつかもっています。 下駄箱の中、トイレの中、ベッドの掛け布団の下、などです。 隠すものは主におもちゃのボールやヘアピン、ヘアゴムです。
ヘアピンはとくにハヤテさんのお気に入りです。 寝ているアザラシーズの頭からさりげなくヘアピンを奪い、いそいそと口にくわえて下駄箱の中に隠します。 時々我が家では、ヘアピンをくわえたハヤテさんとすれ違ったりします。
ベッドの中にボールを隠すのはゲンマさんです。 ちなみに兄弟はボールを投げると拾って持ってきて、もう一度投げるようねだります。
一通り遊んだら、ゲンマさんはボールをひとつずつくわえてベッドの真ん中に潜り込みます。 アザラシーズがベッドに入るときにそれは発見されます。 多いときには5つから6つのボールをお尻の下に引いちゃったりします。 それらはおもちゃ箱に戻され、また次の日には兄弟で引っぱり出し隠され戻される、と同じ事の繰り返しです。
なんだか猫というより、犬を飼っているような気になってくるなはしかたがないような気がします。
その五 退路はどのようなときも確保すべし。
危機に陥ったとき、あらかじめ逃げ道を用意しておくことは長生きの秘訣です。 どのようなときに危険にさらされるか分からないからこそ、いつでもどんなときでも退路は確保されているべきなのです。
その点ではゲンマさんよりハヤテさんに一日(?)の長があります。 ハヤテさんの得意技は後ろ足キックです。 例え前から抱き上げられようとも、うしろからおさえられようとも、その強力な後ろ足キックで敵を怯まし、逃げることに成功してきました。 ちなみにその被害者はいまのところ、実弟のゲンマさんとアザラシーズ、それから病院の先生です。 たいがい流血沙汰になります。 最近では実弟のゲンマさん以外にくりだされることはないようです。
だからといってハヤテさんの野生の勘が鈍ったわけではありません。
ハヤテさんはだっこが大好きです。 が、膝の上や普通のだっこは嫌いです。 一番落ち着くのは肩の上です。 だっこされるとかけ上って肩の上にのります。 これは野生セオリー発案者にいわせると、「逃げやすいから」ということらしいです。
……なんだかちょっと切ない気がするのはアザラシーズだけでしょうか……。
以上、野生セオリー五箇条でした。 ちなみに「うちの子も似たようなことするわ!」という方、きっとあなたのオコサマも野生なのでしょう。 ぜひお友達になって下さい。
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