2003年10月某日、珍しく休日なのに朝からだらだらと新聞を読んでいたら(たいがいはだらだらと寝ている) 目に飛び込んできた記事がありました。
動物シェルターで猫があふれている、ので譲渡費用を引き下げて里親を大募集中とのこと。
以前から猫飼いたいな〜、と思っていたアザラシーズ、早速シェルターに行ってみることにしました。
ちなみに犬でもよかったのですが、なんてったってカナダ。
今だに慣れない冬の寒さを考えると散歩いらずの猫がアザラシーズには ぴったりです。
そんなわけで電車とバスを乗り継いでやってきました、 The Toronto Humane Society (トロント動物愛護協会)。
ここはシェルターや病院を常設した、動物保護のための非営利団体です。
以前から話には聞いていたし、協会制作のテレビ番組も 観ていたので、一度は見学にいってみたいと思っていました。
なかなか立派な建物です。
入って右が犬、左が猫の保護室。
とりあえず左の部屋に直行。
猫たちは各々檻に入れられているのでとりあえず端からごあいさつ。
思っていたよりも沢山の人が来ています。
なんだか嬉しくなりました。
子猫だけではなく色んな理由で引き取られてきた成猫もたくさんいます。
というかどちらかというと成猫のほうが多い。
飼育係の方がいうにはやっぱり子猫のほうが人気があるのですぐに引き取られていくからだそう。
なかには特別なお世話が必要な猫もいて、そういう子達はなかなか里親さんもみつからない。
つらいですね、と言うと、けれど時々そういう子達をうんとかわいがってくれる里親さんとかがみつかるから大変な仕事だけど やめられないんだ、と楽しそうに語ってくれました。
動物だけでなく人の温かさにもふれることができる場所なんですね、ここは。
それはさておき。
確かに美猫も沢山いるんだけど、う〜やっぱり子猫に目がいってしまう…。
アカのお気にいりはちょっとアホそうなちびっこ三兄弟。
小さな檻の中で、飯に足をつっこもうがトイレに転がり込もうが 大暴れしてます。
人見知りどころかあんまり自分たちの状況も把握してなさそうなアホぶりがラブリーです。
そしてアオのお気に入りはグレイな毛皮が美しい兄妹(姉弟?)猫。
はっきりいって見分けがつかないくらい何もかも そっくりです。
三兄弟とは正反対に誰がきてもこれっぽっちも反応しないで、二匹でぴったりなぜか堂々と う○こ箱の中で寄り添ってます。
そのなんだかプライドの高そう〜な所にときめいてしまいました。
ちなみにアザラシーズ、多頭飼い希望です。
とりあえず譲渡書類を書きながら、どうしようかね〜と一時間以上かけてケージの前を行ったり来たり。
なかなか決心がつかなく、というか決め手に欠けて、だんだん今回は見学だけにしとくかねぇ、という気分にさえなってきました。
だがしかし。
猫の神様はアザラシーズを見捨てていませんでした。
あきらめムードがただよってきたそのとき!
そう、運命は高らかに鳴り響いたのです!!
一番端の一番下の檻にひっそりとその兄弟はいました。
ほんのちょっとでもケージの入り口から遠のこうとするように、 すみっこに二匹で寄り添いながら。
う○こ箱兄妹と違い、全神経をこちらに向けて警戒しまくりな様子がなんだか痛々しい。
大きな目と耳に、がりがりの体。
「子猫」よりは一回り大きくて生後3、4ヶ月くらいでしょうか。
ちっとも懐こうとしない上、人が周りにいるときは奥からでてこようともしない、飼育係の人も檻から出すこともできない、 そんな二匹の前で立ち止まる人もあまりいないようです。
けれどけれど、そのおどおどびくびくした態度が、アオのつぼにしっかりがっちりこれでもか!ってくらいに はまってしまったのです。
ええ、そうです。
餌を食べているときさえも、上目遣いでこちらを伺うその姿に、ずきゅ〜んと胸を打ち抜かれました。
早速アカを丸め込み、審査のための番号札をもらってきました。
あとは自分たちの順番が来るまでひたすら待つだけです。
ちなみにここは早い者勝ち。
つまり誰かが先に里親として決まってしまえば諦めるしかありません。
不安になりながらもとりあえず待ちます。
待ちます。 待ちます…。 待ちま…。 待……。
……………(3時間経過)……………。 だーーーっ!いつまで待てばいいんじゃ!!
そうなのです。
里親希望者へのインタビューは時には30分以上かかることもあり、実際に決まったら決まったで またいろいろと時間がかかるのです。
スタッフの方が何人もいてもここは猫だけではないので多少の待ち時間は仕方がありません。
はやる気持ちをおさえつつ、ここは暇つぶしに犬や他の動物でも見に行ってみましょう。
犬はハウンド系の成犬がとても多い。
子犬はほとんどいません。
バウバウ力の限り吠えていて、正直うるさいけれど なかなか元気がありあまってるようです。
ボランティアの人たちが日に何度か外へ連れていくそうですが、やっぱりストレスがたまるのはしかたがないのでしょう。
ごめんね〜、見るだけでなんにもないんだよ〜、と歯をむき出してる犬に謝りつつ小動物コーナーへ。
おー、こちらはなかなかバラエティにとんでいます。
うさぎ、ハムスター、チンチラ、モルモット、オウムにインコ。
それから、か…亀? それも緑亀かよ…。 微妙です。
けれどもっと微妙なのは、愛らしいハムスターたちの横にでーんといた、 ドブネズミでしょう。
そのへんの子猫よりずっと大きな体、独特のしっぽ、むき出した歯、どこからどうみてもドブネズミです。
しかも「捨てられていたところを保護した」って…。
それって本当に捨てられていたんだろうか…?
それともこれはあめりかんじょーく(アメリカじゃないけど)というやつなんでしょうか。
外国人のアザラシーズにはちょっとわかりません。
そんなこんなでそれなりに楽しみつつ待っているとやっと順番が回ってきました。
係の人に書類を渡し、 一緒に兄弟の檻へ。
まずは彼らを引き取る上で知っておかなければいけない諸々のことの確認です。
つまり手術は必要かとか何か病気を持っているかとか何歳だとか。
人の良さそうなおばさんが彼らのデータを片手に説明しくれました。
「ん〜、どれどれ。 ああ! この兄弟ね。 ここへきたときに医者にかかっていたけど今は完治しているわ。 生後5ヶ月だから去勢手術はまだね。 それから彼らは絶対に二匹一緒でなければダメ。 5月にはここに引き取られていたんだけど、何度か逃走しようとして譲渡時期が遅くなったの。 あと、Feralだから人になれるまでちょっと時間がかかるかもしれないわ。」
…Feral? ……えっ! Feral Catsなの?
Feral Cats。 フェラルキャット。
日本ではなかなか聞き慣れないのですが、直訳は野猫。
飼い猫が野生化したものをさします。 ここカナダではとくに山や森の中で住んでいて、野生動物のように扱われています。
人間を見たことのない猫たちもいるそうです。
イメージ的にはイリオモテヤマネコとかに近いでしょうか。
もちろん生粋の山猫ではないのでそんな珍しいものではありませんが。
基本的には人と接触のある猫たちよりも凶暴で警戒心が強く、人に懐かないといわれています。
くわしくはコチラの 「猫大図鑑」で紹介していただいてますので、 ぜひどうぞ。
おばさん的には、もし膝にのったり甘えてきたりというような普通の猫を期待しているんなら、 ちょっとオススメできないとのこと。
もしかしたら一生慣れることもないかもしれない、というのです。
なるほど、彼らの警戒ぶりは生まれなのね、と納得させられました。
しかし、人とは障害が大きければ大きいほど燃えるもの。
猫なんてそっけなくてなんぼのもの!
そこを懐柔するのが醍醐味よ! と猫好きの血がうずいた結果、次の瞬間には「ノープロブレム!」と叫んでいました。
まっててね、いま父さんが助けてあげるから(?)、と相変わらず奥からこちらをにらんだまま動かない兄弟に勝手に宣言し、 アザラシーズ、面接に挑みました。
さて面接ですが……拍子抜けするほどあっさりパスしてしまいました。
実を言うとカナダ国民でないので、 日本に帰るときどうするみたいなあたりをつっこまれるかなぁと思ったんですが。
「アレルギーは?」 「ありません」
「猫を飼ったことは?」 「7匹ほど」
「家は?」 「アパートですがすごく広いです」
「去勢手術は?」 「します」
「外には?」 「出しません」
「子猫は結構いたずら好きだけど大丈夫?」 「それが楽しいんです」
「家具とかは?」 「傷ついて困るほど高価のものはありません」
「責任者はどちら?」 「アタシです」
という感じ。
あまりのあっさりさに今までの人たちはもしかして世間話してたのか? と疑ってしまいました。
ひとつ驚いたのは「デクロウ」という言葉。
つまり爪を抜いてしまうらしいんです。
アザラシーズ、初めて聞きました。
これって最近では日本でも当たり前なんですかね?
思わず爪を抜くところを想像してしまい 「デクロウはする予定?」という質問にぶんぶんと頭をふって否定。
おばさんもオススメしないとのことで、ちょっとホッとしました。
面接をパスした今、残るは書類にサインしてとらわれの兄弟を救いだす(?)ばかりです。
が。
しかしここで問題が。
アザラシーズの本日の足は公共機関です。
それも遠い。
ちょっとさすがに初日はそれじゃあ無理がある、それも二匹だし、といわれ困りました。
ここまで所要時間6時間強。 いまさらあきらめられません。
しばし相談の結果、明日朝一番にレンタカーで迎えにくることにし、一度撤退することにしました。
翌日。
早起きしてやってきました。
お迎えに。
昨日全て終わらせているので本日は 書類に最後のサインをして受け取りだけです。
30分もしないうちに順番が回ってきました。
係りのお兄さんに、昨日帰りに買ったケージを渡して受付で待つことしばし。
!! 来ました〜! 我が家の新しい家族が!
ケージの入り口からのぞくとやはり一番奥からこちらをにらみつけてきましたが。
……まぁ、そこはおいおい、ということで。
一匹25ドル、二匹で50ドルを払っておしまいです。
正直、とても浮かれていました、アザラシーズ。
シェルターのスタッフの方々から「グッドラック」と必要以上に何度も声をかけられたこととか、兄弟をケージに入れてくれたお兄さんの 腕が実は傷だらけで、疲れ果てた顔をしていたこととか、レジのお姉さんから「あせらず時間をかけて頑張って!」と力づけられても気にならない程に。
いつもならありえないくらいゆっくり丁寧に運転される帰りの車の中。
ケージの隙間からおどおどとのぞく大きな目を、アザラシーズはきっと一生忘れることはないでしょう。
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| 今回の教訓 「一目会ったその日から恋のはな咲くときもある」 |
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